今春の高校入試の概況

近年の進路状況の傾向

 2020(令和2)年度(2021(令和3)年3月卒)の公立中学校卒業生のうち、高等学校などへの進学者は71,195人、進学率は98.5%で依然高い水準で推移していますが、都立高校への進学率は前年度より0.7ポイント減の51.7%で都立離れはさらに進行しました。私立高校進学率は32.4%で前年度から0.2ポイント増にとどまったのに対し、通信制高校への進学率が年々上昇しており、進学者全体は前年度より2500人以上減っているにもかかわらず400人以上増加して、初めて5%を超えました。ここ数年は通信制志向が強まってきていましたが、オンラインで受講するコースや近隣のキャンパスに通学するコースを選べる通信制高校がコロナ禍の受験生に受け入れられ、さらに勢いを増している状況です。

都立推薦試験

 ①出願傾向
 特別推薦含む推薦入試の倍率は2.54倍で前年度(2.78倍)から0.24ポイントダウン、前々年度の2.55倍をわずかに下回り過去最低倍率となりました。
 前年度は検査項目から集団討論がなくなったことや、検査日がほとんどの学校で2日間から1日へと短縮されるなど検査の負担が軽減されたことで倍率アップしていました。2022年度もそれらの措置は継続されましたが、前年度の高倍率が敬遠されたほか、集団討論を実施せず個人面接や作文・小論文の配点が上がったことで調査書点の差を逆転しづらいと考えた層も一定数いたものと考えられます。

 ②高倍率になった高校
 男女別募集の普通科でもっとも高い倍率になったのは、男女とも青山で男子は5.93倍、女子は9.62倍でした。男子は次いで広尾5.00倍、東4.92倍、足立4.86倍、城東4.66倍の順、女子は鷺宮5.65倍、日本橋5.50倍、戸山5.23倍、東5.14倍と続いています。単位制普通科は新宿が6.53倍で再びトップに立ち、大泉桜の3.85倍が続きました。
 専門学科では、総合芸術「美術」が6.63倍でトップとなり、毎年その上をいっていた総合芸術「舞台表現」5.92倍を抜きました。次いで園芸「動物」5.20倍、工芸「デザイン」「グラフィックアーツ」が同率で4.40倍と続きました。

 ③推薦合格者の状況
 全日制の推薦合格率は39.2%となって前年度(35.6%)から大幅に緩和しました。推薦募集枠拡大の商業科は70%を超えました。工業科も66.8%と高く、普通科との格差が拡大しました。

都立一般試験

 ①出願傾向
 一般試験の最終応募倍率は1.37倍で、過去最低だった前年度(1.35倍)に次ぐ低倍率でした。都立離れの傾向は今年も続いているようです。
 定員割れになった全日制の学校は普通科26校(前年度26校)、専門学科30校51学科(同27校45学科)、総合学科3校(同2校)となり、専門学科で増加しました。専門学科は推薦枠を拡大したため一般入試の募集人数は減っており、倍率が上がりやすい状況でしたがそれでも定員割れを起こしており、専門学科離れ・普通科志向がさらに進行していると考えられます。

 ②高倍率になった高校
 男女別募集の普通科でもっとも高い倍率になったのは、男子は今年度も日比谷で2.50倍、女子は神代で2.48倍でした。男子は次いで目黒2.39倍、青山2.25倍、戸山2.14倍、豊多摩2.05倍、女子は広尾2.47倍、井草2.36倍、向丘2.35倍、前年度トップの三田は2.26倍でした。総合学科のトップはここ数年低倍率が続いていた晴海総合が大きく応募者を増やし1.77倍、次いでつばさ総合が1.23倍となりました。

 ③一般合格者の状況
 全日制全体の受検生(38,905人)のうち、合格率は73.6%(前年度75.7%)で、不合格者数は前年度(9,127人)より1,138人増えて10,265人と多くの受検生が涙を呑んでいます。
 今年度は男女別定員のうちの10%を男女合同で決定する「男女別定員緩和措置」の適用を初めて全校に拡大しました。その結果、女子の合格者が定員より多くなった学校が多数あり、応募時には男子の方が低倍率だったにもかかわらず男子の不合格者がたくさん出るといった現象が見られました。東京都は今後徐々に男女別定員から男女合同定員に移行していく予定で、2023年度入試から合同定員の枠を現行の10%から20%に拡大するかどうか、今後検討していくとのことです。